無線通信に用いる電波は、周波数や振幅を少しずつずらすことで、「その電波が割り当てられた」機器だけに送受信されるようになっている。だが、日本では、通信に利用できる電波の範囲が限られており、各種モバイル機器など、電波を利用する機器が広く浸透しているにもかかわらず、それに見合う電波の確保が難しい状況にある。携帯電話などでも分かるように、昨今では、ネットワーク環境が込み合っていることも多く、大きめのデータを送受信する際に、うまくいかないケースも珍しくない。そこで、(1)送信するデータを複数のパケットに分割、(2)さまざまな無線メディアの中から、その時点において混雑していないものをいくつか確保、(3)分割したデータをそれぞれの無線メディアで送信、(4)それを受信側で再構築する、という通信方式が提案されている。これをコグニティブ無線といい、総務省の「電波資源拡大のための研究開発」でも、課題の一つとなっている。「コグニティブ(認知)」の名が示す通り、ネットワークの混雑状況を見て、最適と思われる経路を選び出し、さらに複数の無線方式に自在に対応するシステムを確立することが前提となるため、その技術開発が進められている。