何かを触ったときの感触や、何かから力を受けたときの感覚、すなわち触覚や力覚を遠隔地に伝送して、機械的に再現する技術。各方面で研究が進んでいるが、2009年7月22日から開催された無線情報通信の展示会「WIRELESS JAPAN 2009」において、NTTドコモが開発した装置が発表され、話題にのぼった。展示されたのは、力の情報を送受するレバーを突き出した30cmほどの箱型の装置で、有線でつなげられ、送・受信側ともほぼ同じものとなる。送信側を「マスター」、受信側を「スレーブ」と呼ぶ場合、マスター側のレバーが動かされると、それに直結したモーターの軸が回され、一連の動作を回転角や加速度の成分として読み取り、スレーブ側に送信。スレーブ側にて、同様のパターンでモーターがレバーを動かし、マスター側の動作を再現する。このやりとりは双方向で連携され、スレーブ側で何らかの負荷や抵抗が生じれば、その情報はマスター側に伝達・還元され、これが触覚や力覚として感知されることになる。物をたたいたときの衝撃はもちろん、硬さや質感、凹凸の様子、弦を弾くような感触など、微妙な感覚にも対応できる。今回の装置では、直線的な動きから得られる感覚にしか対応していないが、今後、立体的な動作にも対応できるようになれば、ロボットをスレーブとした遠隔治療や災害現場での救出作業、あるいはネットショッピングで服の手触りを確認するような広範囲の応用が期待できる。最大の課題は、ネットワーク通信の際に生じるタイムラグで、マスター側とスレーブ側との相互通信で生じる時間差を0.03秒以下に抑えなければ、利用者に違和感を覚えさせてしまうため、実現には、より高速な通信環境の整備が不可欠となる。また一方で、現実的なタイムラグは一定ではなく、これも使用時の違和感につながるが、この問題に関しては、時間的な揺れをノイズとみなして除去する手法を導入することで、解決に成功している。