事故収束作業が続く東京電力福島第一原子力発電所に投入するべく仕様を特化させた、緊急災害対応ロボット「Quince(クインス)」の汎称。現時点では、このロボットの1~3号機がこれに当たる。Quinceはもともと災害現場での情報収集を目的に、千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo ; Future Robotics Technology Center)などが共同開発したもので、1号機は2011年6月末から同原発施設の調査のために投入された。その後、先行投入されていたアメリカのロボットを超える走行性で建屋内の情報収集にあたったが、同年10月20日、同原発2号機建屋内で通信ケーブル切断事故が起きて操縦不能となり、現場に取り残されている。もともと原発事故を想定した機体ではなかったことや、用意された建屋の図面が実際の構造と異なっていたことなど、同センターではさまざまな課題を反映させ、既存の2号機と3号機に機動性能の強化や追加装備を施す大幅な改修を行い、12年1月30日に公開した。機能面の改善として、1号機のケーブルが絡まって切断されたことをふまえてのケーブル巻き取り装置の全自動化、通信装置の高速大容量化、コントローラーの操作性の向上、操作画面の一新や警告機能の追加などを行った。また、両機は1台が実作業している近くでもう1台を待機させるペア運用を前提とし、ともに無線LANを搭載しているため、実作業をしている側のケーブルが切断されても、待機している側を通じて無線操作が行える。2号機と3号機の共通装備は線量計、温度計、湿度計、前後に備えたカメラなどで、2号機には計器を読み取るための専用カメラのほか、浮遊している塵(ちり)を収集するダストサンプラーが、3号機には三次元的な空間地図を作るための3Dカメラが搭載される。同年2月中に、福島第一原発に向けて出発し、現地で作業員の操作訓練を行ったうえでの稼働になる予定。同センターでは、今後も原発対応版Quinceの開発を継続するという。