東京電力福島第一原子力発電所の事故収束支援のためにトピー工業(本社・東京都品川区)が開発した探査ロボット。事故後の原子炉建屋内は、がれきの散乱をはじめとし、もともと階段が狭いうえに濡れてすべりやすいなど、足場の条件が非常に悪い。そこで、東京電力から得た技術要件をもとに、高性能のクローラー(キャタピラ)を装備した情報収集ロボットとして開発され、2012年3月6日に東京電力への貸与が発表された。同社では建設機械用のクローラーの製造に実績があり、東京工業大学の大学発ベンチャーHiBot(ハイボット)とともに、レスキューロボットなど、悪条件下で活動するロボットの足回りを担うクローラーロボットモジュール(crawler robot module)の開発を進めてきた経緯があり、その技術がベースとなる。全長505ミリ×全幅510ミリ×全高165ミリほどのクローラーロボットモジュールに放射線計と5台のカメラを備えており、全高は830ミリ、総重量は45キロになる。クローラーは片側に二つずつ横並びで設けられ、特に外側のクローラーはフリッパーアーム(flipper arm)といって、独立したアームとして動かすことができるため、段差や階段があっても、爪の付いた腕をかけるようにして乗り越えることができる。操縦を含めた通信は、無線方式と同時に光ファイバーケーブルによる有線方式も採用。からみ防止のための自動巻き取り・繰り出し機構を設けたケーブルは、最大で400メートルまで伸ばすことができ、他の作業ロボットに無線通信のトラブルなどがあったときには信号中継の役割も果たす。バッテリー動力で約5時間稼働し、建屋で地下へ向かう階段の踊り場と同等の70センチ四方のスペースでも旋回可能で、階段を含め、最大45度、23.5センチの段差まで昇り降りできる。先に投入されている千葉工業大学未来ロボット技術研究センターの「Quince(クインス)」よりも小型で、狭い空間での作業に適している。