ガンマ線(γ線 gamma-ray)を広範囲に検出し、その発生源となる放射性物質の分布を可視化する装置で、東京電力からの相談を受けて宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発。2012年3月29日に発表された。次期X線天文衛星アストロHに搭載するためのセンサーをベースにしたもので、広い範囲の中から、局所的に放射線量が高いホットスポットの位置を特定できる。放射線測定によく用いられるサーベイメーターは、ピンポイントの測定しかできないうえ、高い場所などでの使用が難しい。対して、超広角コンプトンカメラは、ほぼ180°に及ぶ広い視野角と、離れた場所にある放射線源を撮像する性能をもつ。ガンマ線は強い貫通力をもっているが、物質を貫通するとき、そこに存在する電子にエネルギーを与えて減衰し、進行角度を変えるコンプトン散乱(Compton scattering)を起こす。この現象を利用したのがコンプトンカメラで、JAXAの場合、シリコンデバイス2層と、ガンマ線のエネルギーを高い効率で電子に与えることで貫通を抑えるテルル化カドミウムデバイス3層とを密に重ねた検出器を考案。(1)ガンマ線がシリコン層を貫通する際と、(2)コンプトン散乱したガンマ線がテルル化カドミウム層に達した際のそれぞれにおいて、電子が与えられたエネルギーとその反応の位置を検出。(1)と(2)の検出エネルギーの差と反応位置のズレをもとに、ガンマ線のエネルギーと飛んでくる方向を割り出し、エネルギーの強さに基づいて放射性物質の種類を判別する。各方向からやってくるガンマ線は数十分の時間をかけて積算量で検出し、そのエネルギーの強さに応じて色分けしたうえで、魚眼レンズのカメラで撮影した現場の写真に重ね合わせ、ホットスポットを表示する。福島県の飯舘村で行われた実験では、雪による散乱や遮蔽の影響を受けながらも、60分間の撮像で、約20メートル離れた数マイクロシーベルト/毎時の小さな汚染源までも撮影することができた。