太陽エネルギーのみを利用する飛行機にて、世界一周を目指すプロジェクト。さまざまな機器や乗り物のエネルギー効率向上の足がかりにする意味合いも含む。2003年にスイス連邦工科大学の予備調査を経て、バートランド・ピカード氏とアンドレ・ボルシュベルグ氏を中心に始動、科学者やエンジニアたちを伴いプロジェクトチームを結成。07年には、ドイツ銀行グループが主要スポンサーとなった。計画に用いる飛行機「ソーラー・インパルス」は、異常に長い主翼をもつグライダー状の機体で、主翼と尾翼に設置する単結晶シリコン太陽電池パネルによって電気エネルギーを得て、プロペラを駆動させる。余った電力はリチウム電池に充電されるので、夜間飛行にも対応可能。一方、徹底した軽量化が追求され、胴体、主翼、尾翼、垂直尾翼などの各部位は、どれも極めて細く薄く作られ、材質には強靱(きょうじん)かつ軽量なカーボンファイバーが採用されている。09年6月26日にスイスのデューベンドルフ軍飛行場にて公開された一人乗りの試作機「HB-SIA」は、全長20mに対して、翼幅は63.4mにもなり、主翼と尾翼の上面には合計で200m2にもなる1万1628枚の太陽電池パネルが敷きつめられている。半面、重量は中型自動車と同程度の1600kgしかない。12年の計画実行に向けた本命の機体「HB-SIB」は、翼幅80m、太陽電池パネルの総面積は250m2にスケールアップされる予定で、二人乗りになる可能性もあるという。