東京都区部から千葉市周辺にかけての東京湾北部を震源とする首都直下地震(首都直下型地震、首都圏直下地震、首都圏直下型地震)。地震は、関東などの載る北米プレートと、その下に南から潜り込むフィリピン海プレートとの境界面で起き、規模はマグニチュード(M)7.3を想定する。内閣府の中央防災会議が想定するM7クラスの首都直下地震18種の一つで、過去に発生した記録はないが、人口密集地帯を震源とするために、首都直下地震のなかでは最大の被害をもたらすと考えられている。2012年3月7日、文部科学省の「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」が、最新の地震観測網による分析結果として、プレート境界面は東京湾北部では海底の20~30キロメートル下にあり、従来の想定深度より約5~10キロ浅いと公表した。同プロジェクトは、首都直下地震の全体像の解明と地震被害の軽減、首都機能維持に役立てるためのもので、07~11年度の5年間をかけて首都圏296地点に地震計を設置し、震度や地震波の伝わり方から首都圏の地下構造の調査・分析を進めていた。また、震源が浅くなると、地震の規模は同じでも揺れが大きくなる可能性が大きく、最大震度6強としていた従来の想定に対して、最大震度7の揺れが想定されるとの分析結果も公表された。3月30日に公表された同プロジェクトの震度分布図」では、震源域を(1)東京都・千葉県境付近、千葉市周辺、東京23区西部の3通りに分けた東京湾北部地震の震度分布と、(2)過去に発生例の多い千葉県から茨城県を震源とするM7.1の地震の震度分布とが作成された。(1)の県境付近を震源とする場合は、東京都江戸川区、江東区、品川区、大田区、神奈川県川崎市など広範な地域で震度7が、千葉市周辺が震源の場合は隅田川河口付近で震度7が、23区西部が震源の場合は隅田川河口付近と川崎市などで震度7がそれぞれ予想され、震度6強の地域も、従来の想定の約2倍に広がるとの試算が示された。(2)の千葉~茨城が震源の場合も、茨城県南部で震度7が予想される。これまで東京湾北部地震の被害は、05年に発表された中央防災会議の試算では、死者約1万1000人、建物の全壊・焼失約85万棟、経済被害112兆円とされてきたが、今回の分析を受けて、被害想定や防災対策は見直されることになった。