現実に存在するものを直接手で触れたりすることでコンピューターとインタラクティブにつながる操作環境で、石井裕マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ教授が提唱する試み。「タンジブル」とは「触れて感知できる実体がある」という意味。ユーザーインターフェースとは、人間とコンピューターとの対話(操作法)の意味で、コンピューターの操作環境を指す。文字(キャラクター)を直接キーボードで入力する操作法をキャラクター・ユーザーインターフェース(CUI)という。一方、モニターに表示された画像をマウスなどで直感的に操作するものを、グラフィカル・ユーザーインターフェース(GUI)といい、現在の主流の操作環境である。しかしCUIもGUIも、モニターのなかに封じ込められた二次元的な操作環境であり、人間と情報とは壁で区切られている。石井教授は1997年に、情報に物理的表現を与えてユーザーが身体を使って直接情報を操作できるタンジブル・ビッツ(tangible bits)というアイデアを発表し、その操作法をタンジブル・ユーザーインターフェース(TUI)と名づけた。既に試みられているTUIの例としては、透明な板に文字や図形を手書きすると遠隔地の板にも同じものが表示される「クリアボード」や、ビンのフタを取ると音楽が鳴り出す「ミュージックボトル」や、砂遊びで山を作るようにビーズで山を形成すると、そのオブジェが三次元画像としてモニターに再現されるものなど、いずれも触覚と情報がストレートに結び付いたインターフェースであることが特徴である。