電池を電源装置とし、モーターの動力で推進する船。エンジンで駆動するディーゼル船に比べ、排気ガスによる大気や水中への汚染をもたらさない点、振動が少ない点、またコストにおいても利点をもつとされる。2010年3月1日、東京海洋大学の賞雅寛而(たかまさともじ)教授の研究チームは、電気自動車の研究で培った急速充電システムの技術を応用発展させ、東京電力やヤマハ発動機などと共同で、また富士重工業の技術協力を得て、急速充電システムを搭載する世界で初めての電池推進船の建造を発表した。同チームが開発する電池推進船は、少人数の乗員を乗せて短い距離を運航するタクシーボート(taxi boat)と呼ばれる小型船舶タイプで、全長約10m、全幅約2.3m、乗員乗客合わせて12人搭乗できる。モーター出力は25kW(キロワット)、急速充電に対応するリチウムイオン電池の容量は約18kW時(1時間にわたり18kW発電し続ける電力量)で、30分ほどで約80%の充電ができ、フル充電すると約45分の連続航行が可能となる。建造コストは従来船と比べて1.5倍ほどになる見込みで、同年、海の日となる7月19日に公開する予定。その後、実用化に向けた実証実験として、同大学の越中島キャンパスと品川キャンパスの片道約7km間を約20分で運航し、データを収集しながら航続距離の延長や充電システムの効率化などの課題に取り組んでいく。順調であれば、11年度の実用化を目指すという。