無数の小さな雲がさざ波状に散りばめられた「うろこ雲(巻積雲[cirrocumulus cloud けんせきうん。絹積雲とも])」や「ひつじ雲(高積雲[altocumulus cloud こうせきうん])」の中に、ぽっかりと大きな丸い穴が開く事象が確認されており、そのような雲に対する俗称。「穴開き雲」などとも呼ばれ、局地的な降雨や降雪をもたらすかすみ状の雲が、穴の中に偏在することも特徴となる。地上数千mの高度にある雲は、その高度ゆえに低い気圧下にあり、それに応じて水が氷になる温度が低くなることがある一方で、水滴は上昇流によってゆっくりと冷却され、本来凍るはずの温度であるにもかかわらず氷になれない過冷却(supercooling)状態にある。こうした状態の水滴が何かしらの刺激を受けると、一気に氷になり、周囲の水滴を水蒸気にしながら次々に取り込んだ末に、雪や雨となって地上へ落下していく連鎖が生じる。その結果、雲に大きな穴が開く、ホールパンチ雲ができるものと考えられている。その一方、飛行機が雲を突き抜けることがホールパンチ雲発生の引き金になる可能性が古くから指摘されており、アメリカ国立大気研究センターのアンドリュー・ヘイムズフィールド研究員らのチームは、それが事実であることを確認。2010年6月16日付の科学誌「Bulletin of the American Meteorological Society」にて発表した。飛行機はジェットエンジンやプロペラなどの強大な推進力のもと翼に生じる空気の圧力差を起こし、これが浮力となって飛行するものである。こうした圧力の変化は、物質の沸点や融点を左右する要因であり、同時に過冷却状態の水蒸気を凍らせる物理的刺激につながる。