2010年10月30日、愛知県名古屋市で開かれた生物多様性条約第10回締約国会議(COP10、国連地球生きもの会議)の最終日に採択された議定書。微生物や植物といった生物の遺伝資源を利用して、医薬品や食品を開発した場合に、その利益を遺伝資源の原産国にも配分するためのルールで、法的拘束力がある。議定書の内容は、(1)遺伝資源の利用で生じた利益を公正かつ公平に配分すること、(2)遺伝資源を入手する際には、事前に原産国から同意を得ること、(3)企業などが不正に遺伝資源を入手していないかチェックする機関を1つ以上設けること、(4)感染症流行時などのワクチン製造のための病原体は、早急に利用できるよう考慮すること、(5)遺伝資源を使った伝統薬など、先住民族などの伝統的知識を利用する際には、その慣習などに配慮する、など。同会議では、過去の開発までさかのぼって、より多くの利益の還元を求める途上国と、先進国が対立して交渉が難航。議長を務めた日本の松本龍環境相は、先進国側に配慮してルールを適用する時期を議定書発効後に限定する一方で、別個に途上国へ多国間で資金を支援する基金を設けることなどを盛り込んだ議長案を提示し、採択にこぎつけた。11年2月以降に批准の意思を示す各国の署名手続きが行われ、50の国と地域の批准が完了した90日後に発効する予定。