体の中で余った糖が、脂肪に変換されるのを阻害する化合物。京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)、東京大学先端科学技術研究センター、アメリカのベイラー医科大学の共同研究グループが発見し、2009年8月に発表された。脂肪を作るにはいくつもの遺伝子の働きが必要だが、ファトスタチンは、それらを活性化させるSREBP(sterol regulatory element?binding protein)という因子を妨害して、結果的に遺伝子の発現を抑える。2匹のマウスに約1カ月間、餌を過剰に与えた実験では、ファトスタチンを投与したマウスはほぼ健康体で、投与していないマウスに比べてやせており、血糖値が約70%、肝脂肪率も約60%下回っていた。将来的に脂肪や炭水化物の過剰摂取が主原因とされるメタボリックシンドロームを理解する研究に役立つと考えられている。また、石油などの天然原料から作ることができるので、糖尿病や脂肪肝など、代謝疾患の治療薬として利用される可能性もある。同じように脂肪の形成を阻害する化合物には、スタチンとよばれるHMG-CoA還元酵素阻害剤などがある。