2個のダイヤモンドの先端を向かい合わせ、その接点部分に設けたわずかなくぼみに置く試料に高い圧力をかけるダイヤモンドアンビル装置に、加熱用のレーザーを組み合わせた実験装置。地球の半径は6400kmあり、その核となる金属コアは、地殻下のマントル層を越える2900km以上の深さにあるとされ、そのうち深さ2900~5100kmまでを外核、その内側を内核と呼ぶ。こうした地球内部における数百万気圧(水深10mの圧力で1気圧)・数千℃という人智の及ばない領域の構造や成り立ちの理解を深めるためには、同様の条件下で岩石や金属を人工的に合成して、その性質を調べる方法が有効と考えられており、この装置が活用されている。高圧に耐えられるうえ、試料を加熱するためのレーザー光を透過させられるダイヤモンド自体がとても小さく、実験で扱える試料もそれに合わせて非常にわずかであるなど制約も多いが、究極的には地球の中心の高圧・高温を再現するべく数々の改良が積み重ねられてきた。そして2010年4月5日、海洋研究開発機構、東京工業大学、高輝度光科学研究センターによるグループは、目標であった地球の中心と同等の364万気圧・5500℃の状態を作りだすことに成功したと発表。ダイヤモンドの先端部の形状を直径40μm(マイクロメートル:1000分の1mm)の円形にし、同時にあらゆる部品の加工精度を1μm以下に抑え、先端部にはさむ20μm程度の試料に高い圧力をかけながら、近赤外レーザーで加熱することによって目標を達成した。この技術の確立によって、地球内部に存在するあらゆる物質を人工的に合成することが世界で初めて可能になる。また、ここで用いるきわめて微小な試料の分析は本来非常に難しいが、高輝度光科学研究センターが誇る世界最大の大型放射光施設SPring-8の高エネルギーX線ビームを用いることにより、詳細な結晶構造が解析できるという。