宮崎県串間市の都井岬に生息する日本在来馬で、「御崎馬」とも表記する。体長・体高130センチ程度の中型種で、1697年に高鍋藩(現・宮崎県東部)が軍用馬生産の目的で創設した御崎牧場に放牧したものが野生化し、自然繁殖している。オスを中心に複数のメスとその子から成る家族群をつくって過ごす。ほとんど人の管理が加えられずに飼育された結果、急斜面に適応するように後躯や蹄(ひづめ)が発達するなど、特有の資質や体格を獲得した。明治以降、日本在来馬の多くが外来馬との交雑により姿を消すなか、岬馬は影響をまぬがれて在来馬としての形質を残していることから、1953年に「岬馬およびその繁殖地」として、国の天然記念物に指定されている。現在の生息数は約110頭。2011年5月、12頭の岬馬が家畜伝染病予防法で指定される「馬伝染性貧血(伝貧・でんぴん)ウイルス」に感染していることが確認された。伝貧は、ウマ科特有の感染症で人には感染しない。ウイルスの感染力も弱いが、発症すると発熱や貧血を起こして急死することもあるため、家畜の馬が感染した場合は、家畜伝染病予防法に基づいて殺処分される。野生とされる岬馬はその対象外だが、ほかの個体への拡大感染を防ぐために、殺処分も含めた対策が検討されている。