2010年10月6日、スウェーデン・アカデミーは、同年のノーベル化学賞を「有機合成におけるパラジウム触媒を用いたクロスカップリング」を理由として、アメリカ国籍のリチャード・ヘック(Richard F.Heck アメリカのデラウェア大学名誉教授)博士、日本国籍の根岸英一(アメリカのパデュー大学特別教授)博士、鈴木章(北海道大学名誉教授)博士に贈呈すると発表した。クロスカップリング(cross coupling)とは、目的の物質を作り出すために、構造の異なった有機化合物を思い通りに結合させる化学反応のこと。ヘック博士は、1970年代に金属のパラジウムを触媒として、化学反応を促進させる手法を発見。根岸博士は、ヘック博士らの手法をもとに開発されたクロスカップリングを改善した「根岸カップリング」を開発。鈴木博士は79年、それらの手法を元に、安価で容易に手に入る有機ホウ素化合物を使うことで効率よくクロスカップリングが行えることを発見した。この化学反応は、「鈴木カップリング」と呼ばれ、現在は医薬品や液晶など幅広い分野で、材料の生産に活用されている。これら有機合成化学の分野は、多くの日本人研究者が活躍していることから「日本のお家芸」ともいわれている。賞金の1000万クローナは3人で等分される。なお、科学系のノーベル賞3賞のうち、ノーベル物理学賞と化学賞はスウェーデン王立科学アカデミーが、医学・生理学賞はストックホルムのカロリンスカ医学研究所が選考する。