有刺鉄線を囲ったわなにクマの体毛を引っかけて回収し、体毛のDNAを分析して個体数を推定する調査法。近年、ツキノワグマ、ヒグマなどのクマ類が、人里に出没して人間を襲ったり、農作物を荒らしたりする被害が増えており、捕獲したクマを山へ返すか殺処分するかの指針とするため、正確な生息数を把握しようと取り入れる自治体が増えている。調査方法は、対象とする森林内に一辺が数メートルの多角形になるように囲った有刺鉄線を数キロメートルにわたって張り、その中に誘引物となるハチミツなどを設置する。クマがその誘引物につられて有刺鉄線を通過した際、鉄線に体毛が引っかかるという仕組み。有刺鉄線の高さは、クマが鉄線の上をまたぐか、下をくぐるかした時に体毛が引っかかるよう、地上50センチメートルほどの位置とする。後日回収した体毛の毛根部からDNAを抽出、分析し、個体を識別。生息数、生息密度を算出する。生け捕りに比べ、動物に与えるストレスや人間の労力が少なくて済む、広い範囲でのサンプリングが可能などの利点がある。一方で、体毛を回収するまでに毛根部のDNAが劣化してしまう、DNA鑑定に費用がかかりすぎるなどの問題点もある。