三菱電機が開発した、高いエネルギーのX線ビームを発生させる小型装置で、2008年8月28日に発表された。加速器とは本来、電子や陽子などの電荷を帯びた粒子を、電磁気的な力で引きつけたり反発させたりしながら徐々に加速し、他の粒子などと衝突させて、その性質を調べる装置であった。しかし、昨今ではX線ビームの発生など、それ以外の目的にも利用されている。レントゲン写真などに用いられるX線は、加速した電子を金属に衝突させたとき、そこから弾き出される電磁波であり、物質を貫通する性質をもつため、その内部を透視した画像を得ることができる。最近では、マンションの内部構造を調査するケースなど、物体を壊すことなく、その内部状態を調べる非破壊検査にも広く利用されている。X線の貫通力はエネルギーの高さに比例するもので、厚みのある物体を透視するためには、より高いエネルギーのX線を発生させなければならない。それは、金属に衝突させる電子をより高速に加速することにほかならず、そのためには多くの加速プロセスを設けなければならないので、ある程度の距離が必要となる。本来、手軽に持ち運びできる装置では、300keV(キロ電子ボルト)ほどのエネルギーのX線を発生させることが限界であった。しかし、同社が開発した「ラップトップ加速器」は、外径15cm、重さ10kgというサイズでありながら、従来1mを超える350kg級の装置でなければ成しえなかった990keVものX線の発生を実現した。この装置では、真空のリングの中で、電子を1秒当たり1000回加速させながら数十万周も周回させ、同時に細く絞りこむことで、この高エネルギーを実現している。さらに、加速した電子を衝突させる金属もわずか7μm(1000分の7mm)の針状のものであるため、発生するX線も細いビーム状になり、物質の内部に生じている微細な欠損や異物の個所で起こるわずかなX線の屈折までも高い精度でとらえ、透視することが可能となる。