原子番号113の元素で、元素113などとも呼ばれる。自然界に存在する元素は1番の水素から92番のウランまでで、93番のネプツニウム以降はすべて人工的な原子核反応によって合成され、特に超ウラン元素などと呼ばれる。原子核は陽子と中性子から構成されるが、原子番号は、その陽子の数にあたる。だが、陽子はプラスの電荷をもっているため、集まる数が増えるほど反発力が強くなって崩壊しやすくなり、ほとんどの超ウラン元素は合成とともに瞬時に崩壊してしまう。それゆえ、合成された元素そのものを調べることはできず、その崩壊の過程を追跡することによって、合成された元素を特定していく。
理化学研究所の森田浩介准主任研究員らのグループは、原子番号30番の亜鉛を光速の10%まで加速して、83番のビスマスに照射する実験を重ね、2004年と05年に113番元素の合成に成功。しかし、国際純正・応用化学連合と国際純粋・応用物理連合の推薦者からなる合同作業部会による認定には至らなかった。そして12年、同グループは、3個目の113番元素の合成に成功し、新たな崩壊経路を確認したことを発表。新元素の合成を証明するには、崩壊を繰り返したのち、すでに知られている元素になることが重要となるが、当初合成された2個の113番元素は、4回のアルファ崩壊(alpha decay)、つまり陽子2個と中性子2個からなる粒子を放出する崩壊を4回繰り返して、105番のドブニウムになったのち、二つに自発核分裂した。だが、新たに合成した3個目は、ドブニウムになったのち、さらに2回のアルファ崩壊を繰り返し、103番のローレンシウムを経て101番のメンデレビウムに到達。その過程はドブニウムとローレンシウムの崩壊の様子と一致していた。今回の成果で113番元素が認定される可能性が高まった。認定されれば命名権を獲得でき、「ジャポニウム」「ニシナニウム」などが候補にあがっているという。