地球が属する天の川銀河(Milky Way Galaxy)の数百~1000倍という爆発的な勢いで大量の星を作りだす、塵(ちり)に覆われた重い銀河。2010年9月29日、国立天文台の廿日出文洋(はつかでぶんよう)研究員と東京大学の河野孝太郎教授らを中心とする国際研究チームは、初期宇宙のモンスター銀河を世界でも類を見ない198個も大量発見したことを発表。初期宇宙(early universe)とは、137億年とされる宇宙の歴史の中、現在から数十億年前ころから存在している宇宙で、その姿や活動は多くの面で新しい宇宙とは異なる。観測に使用したアステ望遠鏡(ASTE望遠鏡[Atacama Submillimeter Telescope Experiment])は、国立天文台が南米チリの標高4800メートルに広がるアタカマ高地に設置した口径10メートルのサブミリ波望遠鏡。銀河を覆う塵は天体が発する可視光や近赤外線を吸収してしまうため、通常の観測方法では限界があるが、塵は吸収と同時にその1000倍レベルで波長の長いミリ波やサブミリ波(0.1~1ミリメートル)を発するため、これを検出することで、通常の手段では捉えることができない「埋もれた」星形成活動を観測する。今回はさらに、共同研究者でもあるアメリカのマサチューセッツ工科大学のグループが開発したアズテックカメラ(AzTECカメラ[AStronomical Thermal Emission Camera])を導入し、微弱な熱放射も検出しながら、地球から見て天の川銀河の塵がもっとも少ない方向にある南半球の「がか座」の方向を観測した。それらを赤外線天文衛星「あかり」が撮影した画像と比較したところ、発見したモンスター銀河198個のうち196個が80億光年(1光年は約9兆5000万キロメートル)以上離れていることや、「埋もれた」星形成活動が10~20パーセントにのぼることが判明。今回の成果は、初期宇宙の銀河における「埋もれた」星形成活動や銀河形成過程の解明をはじめ、モンスター銀河は未知のダークマター(暗黒物質)が密集する場所で誕生すると考えられていることから、その分布に関する知見にも寄与するものと期待されている。その一方、モンスター銀河を明るさごとで分類したときの個数が理論値と異なっており、銀河形成理論の修正という新たな課題も浮き彫りにした。