カメラを通して見る現実の風景や建物などの映像に、リアルタイムで文字やイラストなどのデジタル情報を重ね合わせる技術。コンピューターなどの仮想空間で現実を再現するバーチャル・リアリティー(VR 仮想現実)に対して、情報を補足して現実を強化するという意味で「拡張現実」と呼ばれる。例えば、カメラでレストランを撮影すると、その映像に店名やメニューなどを重ねて映すことなどが可能。ARの実現には、(1)撮影対象の特定、(2)情報を合成、(3)合成した映像を表示、の三つの技術が必要で、(1)は、画像認識技術で風景を特定するタイプと、物体の動きを数値化する加速度センサーや、GPS(全地球測位システム)でカメラの位置と傾きを把握するタイプに大別される。基礎となる技術の研究開発は1960年代から進められ、一部のゲームなどに利用されてきたが、最近ではGPS機能の搭載や画像処理技術の高度化など、携帯電話の高機能化が進んだことから、ARを活用したアプリケーションが一般向けにも登場している。2009年9月に頓智ドット株式会社がアップルのiPhone向けにリリースした「セカイカメラ」は、場所についての投稿情報をユーザー間で共有し、iPhoneのカメラを通して見る景色の上にふきだし風に表示するもので、リリース後4日間で国内ダウンロード数が10万件を超えるなど注目を集めた。