宇宙航空研究開発機構(JAXA)、環境省、国立環境研究所(NIES)によって共同開発された、温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT : Greenhouse gases Observing SATellite)。愛称公募によって、2008年10月に「いぶき」の名が決定した。前世紀から予見され、警告されてきた地球温暖化は、21世紀になって急速に進行を続け、さまざまな対策が講じられはじめている。その原因とされる温室効果ガス、とりわけ代表格である二酸化炭素(CO2)やメタンの排出規制、あるいは、一部の先進国では、これらの発生を抑えるための技術開発も進展している。だが、その一方で、温室効果ガスの発生や移動、吸収などの動向を、地球規模で詳細に追跡・観測することも、欠かすことのできない重要な課題である。「いぶき」は世界に先駆けて、この課題に挑むもので、183億円の予算を投じ、日本の技術力を結集して開発された。太陽電池を並べたパネルを2翼展開することで効率よく電源を確保し、太陽光が地上で反射した際に発生する赤外線の、ある特定領域の波長がCO2やメタンによって吸収されることに基づいて、温室効果ガスの濃度を計算していく。これらの動作をより確実なものにするために、重要なシステムは二段構えの構造をもたせてある。観測点は一つ当たりが直径10kmで、通常は約158km間隔で設けられ、地球のほぼ全域で実に5万6000ものポイントが設定される。高度660kmの上空で周回し、約100分で地球を1周することになるが、一つの観測点は3日に1回の割合で観測・分析されることになり、それらのデータは、世界中の科学者たちに無償で配布される。つまり、世界で初めての、温室効果ガスを正確に測定する「共通のものさし」として、さまざまな研究分野に貢献することが期待される。09年1月23日に、H2Aロケット15号機にて、東大阪宇宙開発共同組合による「まいど1号(SOHLA-1)」など7基の人工衛星とともに、打ち上げられる。