アメリカ、カリフォルニア州のローレンス・リバモア国立研究所に設置された、世界最大のレーザー核融合施設。同国エネルギー省傘下の国家核安全保障局の資金で1997年に着工され、2009年3月31日に完成し、同年5月29日に竣工式が行われた。核融合とは、原子核に陽子を1個しかもたない水素のような軽い元素が、膨大なエネルギーで衝突、あるいは圧縮された際、その原子核同士が融合して別の元素を形成しつつ、そのとき融合されなかった一部が莫大なエネルギーに変換される現象をいう。また、点火とは、入力したエネルギーよりも核融合で発生するエネルギーが高くなる反応を維持した状態をいう。NIFでは、水素に中性子1個が加わった重水素と、さらにもう1個中性子が加わった三重水素を極低温で凍らせて燃料とし、192本もの高エネルギー紫外光レーザーを1億分の2秒間集中照射する。その瞬間的なエネルギーは約200万ジュールに達し、1億℃の熱とともに、太陽のような恒星や巨大な惑星の中心、あるいは核兵器の爆発時に生じるのと同等の圧力となって、燃料を圧縮する。このとき、重水素と三重水素が融合して、陽子2個と中性子2個を核とするヘリウム(となりつつ、中性子1個を弾き出す。しかし、それらを合わせた質量は、元の重水素と三重水素の合計質量よりも少なくなり、この減少した質量が「E=mc2(質量に光速[3×108m/s]の2乗をかけた値が、変換されることになるエネルギーの値)」に基づいてエネルギーに変換される。NIFでは、核爆発や巨大惑星の内部の状況を再現できるため、実際の核兵器を使用せずとも性能確認を行えるほか、宇宙創世や素粒子の研究、あるいは核融合を未来のエネルギー源にするための研究にも役立てられる。最も有名な核融合施設である、フランスに建設中の国際熱核融合実験炉(ITER)は、原子を原子核と電子とに分解した高温のプラズマ状態を利用するもので、核融合の方式は全く異なる。