LSI(large scale integration 大規模集積回路)の消費エネルギーを現在の10分の1にまで減らすことを目標に掲げ、その技術開発を目指す、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業プロジェクト。コンピューターやそれを構成する電子回路、もしくはネットワークなどを形成するIT(information technology)機器は、その性能向上や多機能化、設置台数の増加にともなう通信量の増大によって、消費電力の著しい増加をもたらしている。そこで、同機構は、LSIの消費電力を下げることが、電子機器の消費電力を下げるために有効である点に着目。ITによる省エネと、IT機器の省エネを両立させ、地球温暖化対策にも取り組むグリーンIT(green IT)のコンセプトに基づき、新しい発想や技術開発を公募。2009年7月3日、半導体理工学研究センター、東京大学、慶応義塾大学が連名でその受託を発表し、さらに国内有数のメーカーなどの支援のもと、9社・3大学による産学連携体制でプロジェクトが開始された。LSIの電源電圧を現状の約1.2Vから0.5V以下にまで下げることが大きな課題となるが、LSIを構成する微細なトランジスタは、材料自体や製造工程に起因する品質のバラツキを避けることが難しい。そこで現在では、低い電圧では作動しないような品質の少し劣るトランジスタもLSIの中に存在すると前提し、それに水準を合わせ、LSIとして安定した動作を得るために、あえて全体に高い電圧をかけており、余計なエネルギー消費にもつながっている。この厄介な問題に対して、LSIチップの回路構成、ノイズに対する対策、チップ間のワイヤレス通信や外部との接続部分の見直しをはじめ、電圧を細かく制御する電源システムの開発などがなされていくことになる。