専用のメガネを使わない、新しい3D映像(立体映像)方式。東芝が先陣を切って、液晶テレビ「グラスレス3DレグザGL1シリーズ(Glasses-less 3D REGZA GL1 SERIES)」として、2010年12月から20V型と12V型の販売を開始している(“20V型”はディスプレーの対角線が20インチ=約50センチのこと)。通常の3Dテレビでは、右目用と左目用に分割した映像を交互に映し、メガネのレンズに設けた液晶シャッターを高速で開閉させて不要な方の映像を遮断することで、立体視のための視差(parallax)を確保している。同社は、メガネを使わずにこの視差をつくりだすために、細長い円柱を縦に半分に切ったような形のレンチキュラーレンズ(lenticular lens)をディスプレーの画素の列に合わせて並べ、右目用の映像と左目用の映像を振り分ける方式を採用。特筆すべきは、見る位置を変えればその角度に合わせた立体視が行えるという、広範囲の3D映像を実現した点で、同社の場合、9つの異なる方向から見た視差映像を元の映像からつくりだし、これを同時に表示する。具体的には、高性能プロセッサーと新開発の映像回路を駆使して、(1)元の映像の「被写体の動き」「画面の構図」「顔の位置」をもとに奥行きを推定し、(2)9つの視差映像を人工的に復元、(3)この9つの画像すべてを最小単位の幅で縦方向に切り分け、(4)同じ列にあたる切り分け画像同士を抽出して順番に並べていき、(5)見る位置にふさわしい映像だけをレンチキュラーレンズで振り分けるというもの。この技術は、3D映像用に制作されたコンテンツだけでなく、従来の2D映像に対しても有効で、同様のプロセスによって3Dの視差映像をつくりだすことができる。ディスプレー自体も画素の配列方法を変更しており、従来のものは「赤・緑・青」の3つのサブピクセルが横に並んで1個の画素を形成するのに対して、3色のサブピクセルを縦に並べたものを横に9列並べて1個の画素としている。同時に、映像の精細度を確保するため、20V型ではディスプレー全体の画素数をフルハイビジョンの4倍に当たる約829万画素まで高めた。各メーカーもグラスレス3Dテレビの開発を進めており、パソコンにおいても、富士通がグラスレス3Dの導入を発表している。