バイオエタノールは、トウモロコシなど、糖質を多く含む食用植物を主な原料としたアルコール燃料であるが、食料の供給バランスを崩す弊害ももたらしている。そこで、もみ殻やワラ、廃木材などで代用する研究も進められているが、これらの原料の場合、糖質は、細胞壁や繊維を構成するセルロースというとても丈夫な成分のかたちをとっている。セルロースはブドウ糖が強固に結びついたもので、薬品や、高い圧力をかけた超高温の特殊な水を用いなければ、発酵可能なブドウ糖のレベルにまで分解することは難しい。月桂冠総合研究所は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトのもと、神戸大学や大阪大学とともに、酒の醸造の際、でんぷんをブドウ糖に分解する麹菌に着目。麹菌には、もともとセルロースを分解する酵素を作り得る遺伝子も存在しており、これを一部改変することで、その能力を発現させることに成功。同時に、この分解酵素を大量に分泌させる遺伝子の導入にも成功し、これを「スーパー麹菌」と呼んだ。また、同社は、麹菌のセルロース分解酵素の遺伝子を組み込んだ「スーパー酵母」も開発しており、スーパー麹菌が分解しきれなかったセルロースをスーパー酵母で分解しつつ、同時に発酵させ、効率的にバイオエタノールを生産する技術を確立した。この成果は、2008年8月8日に発表され、食用ではない植物を原料としたバイオエタノールの実用化が現実味を帯びてきた。