電気を通す透明のガラス板2枚を用意し、(1)その一方の片面に半導体の酸化チタンを焼き付け、そこに色素を含ませる。(2)これを、もう一方のガラス板と、わずかな隙間を設けて張り合わせ、電解液を注入すると、色素増感太陽電池ができる。(3)(1)の加工をしたガラス側から光を当てると、光エネルギーは色素から電子を弾き出す。(4)この電子を外へ導き、電気機器などで「仕事」をさせて、反対側のガラス板に向かわせる。(5)こうして流れ込んだ電子を受けて、電解質は電子が過剰な状態になるが、(3)の過程で電子を失っている色素が、この過剰な電子を吸収して元の状態に戻る。この電子の流れのサイクルにより、電池として機能する。さまざまな色素の組み合わせで自由に着色できるうえ、透明度も確保でき、ガラスの代わりにプラスチックを使えば、柔らかなフィルム状にもできる。また、シリコンなどを用いる太陽電池よりも大幅にコストダウンできるが、それらに比べて光電変換効率は低い。そこで、可視光のうち青や緑など短い波長の光に対応した色素増感太陽電池を上部に、赤から近赤外光にいたる長い波長の光に対応した色素増感太陽電池を下部に配した二層構造のタンデム型が開発されている。光は、波長が短いほどエネルギーが高く、長いほどエネルギーは低いが、散乱しづらく素通りしやすい。そのため、上部では短い波長の光から高い電圧を得て、そこを通過する低い波長の光からも下部で電気エネルギーを得ようというもの。2008年3月4日、産業技術総合研究所は、このタイプで世界最高の光電変換効率、11.0%を達成したと発表。上部では、高い透明度の酸化チタンを開発し、長い波長の光をより透過させやすくした。一方、下部では、粒の大きさが異なる酸化チタンで多層構造をつくり、入射した長い波長の光を複雑に散乱、屈折、反射させることによって、より多くの色素から電子を得て、電圧は低いものの高い電流を発生させることに成功した。