火山噴火にともなって、その噴煙で発生する電光放電(lightning)のことで、ここでいう「電光」は稲妻と同義。気象現象における雷(thunder ; thunderstorm)は、(1)雲の中で雨粒や雪などになる降水粒子(precipitation particle)が上昇気流によって摩擦しあい、(2)その際、衣服がこすれて静電気が発生するのと同じ過程でプラスとマイナスの電荷が分離して偏在するようになり、(3)その蓄積が局所的に数十万ボルト、あるいは数百万ボルトのレベルに達したとき、稲妻となって対地放電を起こすものである。火山雷はこれと同様に、多量の灰や砂礫(されき)が噴煙の上昇とともに摩擦しあって電荷の分離と帯電を起こすことから発生すると考えられている。現在では、おもにビデオ映像や、その後の状況調査などからメカニズムを推測するという域を出ていないが、爆発音や空振をともなうほど噴火が激しく、噴煙に多量の噴石や灰が含まれるような状況下で発生することが多い。また、火山雷の発生は、マグマの噴出率と、そこから生じる灰や砂礫の大きさに左右され、粒子同士のサイズの差が大きく、さらに大きい粒子に比べて小さい粒子が多いほど電荷が分離しやすいと考えられており、大きな粒子はプラスに、小さな粒子はマイナスに帯電する傾向があるとされる。火山雷の電光放電は噴煙の中を飛び交い、山頂や火口の付近に落雷するもので、数キロにわたり放電する気象現象の雷と比べれば規模ははるかに小さいが、通常1センチ程度でも放電するためには1万ボルト強の電圧が必要となる。このように、雷は気象現象に限らず、強い気流と粒子の存在から生じるものであるため、ほかにも原爆や水爆がもたらす核爆発の際や、山火事などの大規模な火災の際にも発生する。