自然に生じる核分裂で、自然核分裂ともいう。核分裂とは、重い元素の原子核が、二つ、あるいは三つに分裂することをさす。通常の核分裂は、中性子や陽子が原子核に衝突することによって引き起こされ、その際、膨大なエネルギーとともに自らも中性子を放出することになるが、自発核分裂の場合は中性子の衝突など誘発的な原因は関係なく発生する。自然界では、ウラン238もごく小さな割合で自発核分裂を起こすが、原子炉の中では、核燃料の燃焼によって生じる超ウラン元素が自発核分裂を起こすことが多い。その際、炉内が冷却された状態であっても、また核分裂が連鎖する臨界状態でなくても、自発核分裂は一定のレベルで発生する。2011年11月1日、東京電力は事故収拾作業中の福島第一原子力発電所2号機で放射性キセノン(キセノン135)を検出し、翌2日に、一時、局所的に臨界状態になった可能性があると発表。懸念されている再臨界の可能性が疑われた。しかし、自発核分裂によって生成されるキセノン135の推定量が、検出されたキセノン135の量とおおむね一致することや、臨界が起きたときに発生するはずの推定量に比べて非常に少ないことから、同月3日には、臨界ではなく、自発核分裂であると見解を修正した。また、中性子を吸収して臨界を抑える効果をもつホウ酸を炉内に注入しても、キセノン135の量は検出当初のレベルと同等であったことも、判断の根拠とした。その後の同月7日には、原子力安全・保安院もこの分析を追認。一方で、調査に参加した識者の一人が、炉内はメルトダウンによって核燃料が溶け落ちており、その分布の状態などがわからない中で臨界を否定するのは根拠として弱いと意見していたことも、併せて報告された。