赤外線暗視カメラ(infrared camera)で撮影された映像は、通常はモノクロで表示されるが、これをカラーで表示するための画像処理技術。赤外線は可視光線よりも波長が長く、人の目では感知できない。そのため、夜間や暗闇の中で被写体に照射して、その反射を捉える赤外線暗視カメラは、防犯カメラなどに使用されている。こうした赤外線画像に可視光のもとのような自然な色が着いていれば、たとえば犯人の服の色の特定や、夜間に活動する動物の観察など、暗視の効果は飛躍的に高くなる。従来、赤外線画像をカラー化するにあたっては、カメラが捉えた赤外線の強度レベルに合わせて色を割り当てる疑似カラーという方法がとられてきたが、色の再現には限界があった。しかし、産業技術総合研究所の永宗靖主任研究員らは、(1)被写体に赤外線を照射し、(2)その反射を独自の高感度赤外線撮影技術によって検出したうえ、(3)赤外線領域における反射特性と、そこにわずかに存在する可視光領域における反射特性とを比較して、(4)その相関から色を導き、割り当てて、(5)可視光下と同等のカラー映像を得るという、新たな赤外線カラー暗視撮影技術を開発。2011年2月8日の発表に続き、翌12年12月3日には、光の3原色一つずつに対応する3個のCCD撮像素子を用いる3CCD方式を導入して、1秒当たり30フレームかつフルハイビジョン規格での鮮明なカラー映像を得る技術に発展させたことを発表した。この技術を導入した赤外線カラー暗視カメラは、セキュリティー分野や車載カメラ、テレビ放送用カメラなど、幅広い応用が期待される。