オーストラリアが原産とされる外来種のクモで、学名はLatrodectus hasseltii(斜体表記)。メスだけが毒をもち、10~15mmほどの体の大部分を占める黒く丸い腹部に、明るい赤色やオレンジ色の模様をもち、脚を広げると、成体で20~30mm程度となる。対して、オスは成体でも脚を広げて十数mm程度と小さく、体色は褐色で、背面の模様も白い斑紋となる。本来は熱帯から亜熱帯に生息するものだが、日本でも1995年に初めて大阪府で生息が確認され、以来2008年6月までに、三重県、兵庫県、和歌山県、奈良県、愛知県などでも生息が確認されている。ブロックの穴、側溝や空き缶の中など、日当たりがよい人工物の隙間に、不規則に張った巣を作り、小さな虫を捕食する。触られたりしないかぎり、自分から攻撃を仕掛けることはないが、噛み付いた際に、α-ラトロトキシンというたんぱく質の毒素を相手の体内に注入し、神経の働きをつかさどる「神経伝達物質」の制御を狂わせる。この神経毒の作用は、噛まれてから数時間をかけて、強い痛みとともに症状を広げるが、数時間から数日で軽減する。ハチの毒のように、2度目以降の刺咬の方がはるかに重い症状となる「アナフィラキシーショック」や、死に至るような大事はまれだというが、小児、高齢者、妊婦、虚弱体質など抵抗力の弱い人にとっては注意が必要。応急処置としては、流水で傷口を洗い、冷やすことがすすめられ、症状が重い場合は、抗毒素の注射が必要となる。