サクラは、バラ科サクラ属に分類される落葉高木または低木で、山野に自生する野生種と、その野生種をもとに人工的につくられた栽培(園芸)品種に分けられる。日本に分布する野生種は、ヤマザクラ、オオヤマザクラ、カスミザクラ、オオシマザクラ、マメザクラ、タカネザクラ、チョウジザクラ、エドヒガン、カンヒザクラ、ミヤマザクラなど約10種で、その亜種や変種などを含めると100種ほど。観賞用として室町時代に始まった栽培品種の品種改良は、江戸時代以降盛んに行われ、現在最も多く植えられているソメイヨシノをはじめ、フゲンゾウ、カンザン、イチヨウ、ショウゲツなど300種を超えるという。栽培品種は主に接(つ)ぎ木により増殖させているため、親木と同じDNAをもつ個体(クローン)となる。長い歴史の中で枝の取り違えなども起こり、同名異種や異名同種のものなど、品種が混乱している状態にあった。2011年3月8日、森林総合研究所(茨城県つくば市)や国立遺伝学研究所(静岡県三島市)などの研究チームは、DNA分析によってサクラの栽培品種を識別・整理したことを発表した。両研究所などのサクラ1850本を調べてクローン識別を実施し、約200種のDNAデータベースを完成させたという。その結果、ソメイヨシノはすべてが同じクローンの単一品種であることが確認できた。これに対し、シダレザクラ、カンザクラなどは、1つの栽培品種の中に複数のクローンが含まれていた。また、これまで別名で呼ばれていた、エド、イトククリ、オオテマリ、ヤエベニトラノオは、同じクローンであることがわかった。