2011年8月25日に太平洋マリアナ諸島西の海上で発生し、西日本から北日本にかけて大雨による甚大な被害をもたらした台風。台風12号は日本の南海上をゆっくりと北上し、9月3日10時前に高知県東部に上陸、四国地方、中国地方を縦断して4日未明に日本海側に抜け、その後もゆっくりと北上を続けて5日15時に温帯低気圧に変わった。動きが遅く、また上陸後も大型の勢力を保ったため、長時間にわたって台風周辺の非常に湿った空気が流れ込み、北海道から中国・四国にかけての広範な地域で記録的な大雨となった。気象庁の9月14日現在のまとめでは、降り始めの8月30日17時から9月6日17時までの総降水量は、紀伊半島を中心に広い範囲で1000ミリを超え、奈良県吉野郡上北山村では1808.5ミリを記録、同地点の最大72時間降水量1652.5ミリは、1976年の統計開始以来の国内記録となったほか、多くの地点で観測史上1位を更新した。大雨は、各地で土砂災害、浸水、河川のはん濫を引き起こし、さまざまな被害をもたらした。消防庁がまとめた9月21日現在の人的・住家被害は、死者68人、行方不明者25人、負傷者104人、全壊141棟、半壊103棟、一部破損199棟、床上浸水6673棟、床下浸水1万7832棟となった。土砂災害は国土交通省調べで、9月21日現在、土石流等87件、地すべり25件、がけ崩れ77件など、20道県77市町村で189件、豪雨による土砂崩れで川がせき止められた土砂ダム(土砂崩れダム、せきとめ湖)は奈良県と和歌山県で17カ所が確認された。国道、鉄道は各所で寸断され、内閣府によれば9月14日現在、奈良県で7地区、和歌山県で3地区が孤立したほか、経済産業省の調べで9月20日現在、四国電力、関西電力、中部電力、中国電力管内で約31万6000戸が停電するなど、ライフラインにも大きな影響が出た。また、農林水産省によれば9月14日現在で田畑の冠水など農作物被害は北海道から九州まで32都道府県に及び、各地に大きな爪痕を残した。被害の大きさから、政府は9月20日、台風12号の被害を激甚災害に指定した。