富山県・北アルプス立山連峰の、劔岳(つるぎだけ 標高2999メートル)北方稜線(りょうせん)東側の三ノ窓雪渓と小窓雪渓、雄山(おやま 標高3003メートル)東側の御前沢(ごぜんざわ)雪渓の3つの氷体(氷塊)。氷河とは、動かない万年雪とは違い、長期間継続して動いている雪氷体で、これまで、極東アジアではロシアのカムチャツカ半島が南限で、国立極地研究所(東京都立川市)によると日本に現存する氷河はないとされてきた。日本では日本雪氷学会(東京都千代田区)が氷河の唯一の認定機関である。しかし、立山カルデラ砂防博物館(富山県立山町)が2009年から調査を続け、11年秋、全地球測位システム(GPS)を使っての1カ月間の調査で、三ノ窓雪渓(長さ約1200メートル)と小窓雪渓(長さ約900メートル)で最大30センチ超、御前沢雪渓(長さ約400メートル)で7~9センチの流動があったことを確認。この3つの氷体が「氷河」である可能性が高いという論文を日本雪氷学会に提出した。データを同学会が検証し、12年4月1日、国内初の氷河であると確定した。立山連峰は、日本有数の豪雪地帯で、夏の気温も低く、深い谷などの地形的影響もあり、氷河形成の条件が整っているとされている。論文は、同学会誌「雪氷(せっぴょう)」(12年5月発行)に掲載される。