機能が同じでありながら仕様(specification)が異なるためにソフトウエアを共用できないといった、電子機器(device)間にある障壁を取り去ること。CDプレーヤーの場合、メーカーが異なる機器でもCDの音楽再生が可能なのは、機器の仕様が統一されているからである。しかしパソコンやそれから派生した電子機器などでは、機能が同じでも仕様が異なると、往々にして双方のソフトウエアの共用は不可能という例が多い。ウインドウズ系とMac系のパソコンの例でいえば、かつては一方で作成したファイルを他方で使用するには、データを変換(コンバート)するなどの一定の手順を要した。メーカーが独自仕様を採用するのは、各メーカーの開発プロセスにもよるが、仕様が異なれば他の仕様のデバイスのソフトが使えず、結果的にユーザーを囲い込みやすいからである。ネット書店の大手アマゾンは、電子書籍の販売にあたり電子書籍端末キンドルを開発し、キンドル版(仕様)の電子書籍をそろえた。アマゾンの電子書籍を購読するにはキンドルを購入する必要があることから、事実上、アマゾンはユーザーを囲い込んだ。その長所は、キンドルユーザーをアマゾンの電子書籍固有の顧客として確保できるという点であるが、短所はキンドルユーザー以外はアマゾンの電子書籍の顧客にならないという点である。しかしアマゾンは2009年11月、パソコンがあればキンドルなしでもキンドルとほぼ同様の環境下で電子書籍を購読できるキンドル・フォー・PC(Kindle for PC)という電子書籍購読用アプリケーションを無料公開し、続いてアップルのiPhone/iPod touch用のKindle for iPhone、スマートフォンのブラックベリー用のKindle for BlackBerryなど、次々とデバイスの垣根を越えるアプリの公開に踏み切った。さらには10年4月、iPad用のキンドル・フォー・iPad(Kindle for iPad)という無料アプリを、アップルのアップストアに登録し、将来のiPadユーザーをも顧客の対象として、デバイスフリーに踏み切った。iPadの販売台数は、発売1週間でアメリカ国内だけで50万台に達し、1年後にはiPadユーザーは、世界中で800万人以上に拡大するとの観測もある。キンドルユーザー以外の顧客の確保には、デバイスフリーが避けられなかったとの見方もある。