ペリカン目トキ科の鳥。学名Nipponia nippon。国指定の特別天然記念物で国際保護鳥。全長70~80センチ。顔と脚は赤く、羽は全体的に白色だが、繁殖期は頭部から肩にかけて灰黒色になる。翼の下面は「とき色」と呼ばれるピンク色。水田や湿地に生息し、ドジョウやタニシ、カエルなどを捕食する。かつては、中国東北部から中部、朝鮮半島、台湾、日本など東アジア一帯に広く分布していたが、乱獲や生態環境の悪化で減少し、現在では野生のトキの生息地は中国陝西(せんせい)省のみである。日本でも国内各地で見られたが、明治以降に羽毛目当ての乱獲が行われて生息数が激減した。1981年に新潟県佐渡島に残っていた野生のトキ5羽を保護のために捕獲したことで、野生絶滅種となった。93年には佐渡トキ保護センターを開設して、本格的な保護活動を展開したが、捕獲された5羽うちの最後の1羽「キン」が2003年に死亡し、日本産のトキは絶滅した。一方で、1999年から中国産のつがいを基に人工繁殖を行い、2008年からは佐渡島に放鳥して野生復帰を目指す活動が進められてきた。12年には野生下で初めて放鳥トキの卵が孵化(ふか)し、ひな8羽の巣立ちも確認された。日本鳥学会はこれまで、トキ科をコウノトリ目に分類していたが、DNA解析でコウノトリよりもペリカンに近いことが判明し、12年9月の日本鳥類目録の改訂でペリカン目に変更した。