シリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸素を主成分とし、その結晶構造に水を含む鉱物で、天然のものと人工のものがある。天然ゼオライト(natural zeolite)は、堆積(たいせき)した火山灰が地殻変動による圧力を受け、500万~1000万年の時を経て凝固したもの。人工ゼオライト(artificial zeolite)は合成ゼオライト(synthetic zeolite)ともいい、石炭の灰や製紙工場で生じる廃棄物の灰などを原料に、カセイソーダなどを加えて高温高圧下で合成したものとなる。加熱すると、結晶の中の水が泡となって噴き出すことから、ギリシャ語の「沸騰(zeo)」と「石(lite)」が名前の由来となっており、日本では沸石(ふっせき)とも呼ぶ。なお、水が蒸気化したあとには1ナノメートル(10億分の1メートル)前後という非常に小さい無数の穴ができる。また、主成分の一つひとつがもつ電気的な性質から、総合的にみて電気的にマイナスに偏っているため、ふだんはプラスに偏ったナトリウムなどを取り込んで電気的な均衡を保っている。ところが、このナトリウムは、同様にプラスに偏った金属などと簡単に交換できてしまい、この現象をイオン交換(ion exchange)という。こうした無数の穴に加えてイオン交換の作用ももつことから、ゼオライトは水や空気に拡散しているさまざまな物質を分子レベルで引きつけ、吸着する性質をもつ。この効果は、脱臭、土壌改良、水質浄化などに利用されており、水槽用品や園芸用品、ペットのトイレなどとして、広く一般にも販売されている。2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)を受けての福島第一原子力発電所の事故で、原子炉や使用済み核燃料の冷却のために注入した水が、放射能汚染された汚染水(highly radioactive water)となって大量に漏れだしている問題を前に、日本原子力学会会員たちの提案でゼオライトが注目された。放射性セシウムを溶かした海水100ミリリットルに、宮城県仙台市青葉区愛子(あやし)で採掘される天然ゼオライトを入れて混ぜると、5時間で9割の放射性セシウムを吸着することや、ゼオライト1キログラム当たりで6グラムの放射性セシウムを吸着することもわかった。その後、4月16日までに、汚染水が流れ出している取水口付近にゼオライト100キログラムを詰めた大型の土嚢(どのう)を3袋投入。さらに7袋を用意し、順次投入を続ける予定とされる。なお、回収したゼオライトは放射性廃棄物として扱われ、必要に応じた処分がなされる。