一般の地熱発電が150℃以上の熱水による蒸気でタービンを回すのに対し、150℃未満~80℃くらいの温熱で、沸点の低いアンモニアやペンタン、フロンなどの媒体を加熱し、媒体の蒸気でタービンを回して発電する方式。低温の熱源と低沸点の媒体の二つを利用するので「バイナリー(二つの)」と呼ぶ。バイナリー地熱発電、バイナリーサイクル発電、ツーサイクル発電ともいい、温泉を利用する場合は温泉発電ともいわれる。温泉や工場の温排水、ごみ焼却熱や太陽熱などを利用できるため、省資源でなおかつ二酸化炭素の排出もない。施設も小規模で、比較的低コストで設置できるが、課題は発電コストで、1キロワットにつき石炭火力が5~7円、石油火力が14~17円に対して、地熱発電は11~27円とされている。一方、東日本大震災での原発事故や電力不足に際し、環境への影響がなく開発余地が大きい再生可能エネルギーの導入拡大が必要とされている。経済産業省では小型のバイナリー発電設備に関して、ボイラー・タービン主任技術者の選任や工事計画の届け出等を不要にするなど、電気事業法関係の規制緩和を検討している。また、大阪市が大阪府や川崎重工、大阪ガスなどと共同して、市のごみ焼却工場にバイナリー発電設備を設置、従来より25%以上、効率を上げて発電を行う事業が、2011年から3年間の予定で、経済産業省の次世代エネルギー技術実証事業に選定されている。神戸製鋼所が11年秋に発売開始した小型のバイナリー発電システムは、出力最大70キロワットで、1キロワットにつき10円以下のコストにできるという。