産業技術総合研究所の芝上基成(しばかみもとなり)主任研究員、日本電気株式会社(NEC)の位地正年(いぢまさとし)主席研究員、宮崎大学の林雅弘准教授が共同開発した、ミドリムシ(ユーグレナ euglena)から抽出される成分を主原料とするバイオプラスチック。バイオプラスチックとは、生物に由来する成分を中心に合成するプラスチックのこと。通常のプラスチックは石油由来の原料を高温・高圧下で化学反応させて合成するため、製造に膨大なエネルギーを要するとともに、その過程で大量の温暖化ガスを発生させる。そこで、同研究員らは、生物に由来しながらも食用にならない多糖類(polysaccharide 単糖=グルコースが多数結合したもの)を利用しつつ、温暖化ガスの発生も減らせるようなバイオプラスチックの開発を研究。太陽エネルギーの利用率が高いため、水中でも二酸化炭素を吸収して光合成を行える、つまり、存在自体が二酸化炭素の削減効果をもつ微細藻類の中から、高い濃度の二酸化炭素にも対応でき、培養も容易なミドリムシを原料に選択した。このミドリムシの細胞から抽出した、パラミロン(paramylon)という多糖類を主骨格として、パラミロンから生成されるワックスエステル(wax ester)をもとにした脂肪酸、あるいはカシューナッツの殻から得られるカルダノール(cardanol)という油脂成分を付加することで、生物由来成分が約70%にもなるバイオプラスチックの合成に成功。2013年1月9日に発表した。石油由来のプラスチックの代表格であるABS樹脂などと熱可塑性は同等で、耐熱性においては優れているが、衝撃強度には改善の余地があるという。