情報社会では、多くの人がパソコンや携帯電話などのモバイル機器を日常の生活用具の一つとして使いこなしており、機器本体やネットワーク上のサーバーには、ユーザーの個人情報が保持されている。しかし、もしユーザーが故人となった場合に、こうした私的デジタル遺産に対する、相続人のアクセス権や所有権をめぐり、多くの未解決な問題が残されている。アメリカのサーバーの管理会社は、ログイン情報を本人以外に伝えないケースが多いとされる。バーチャル金庫を提供する、アメリカの「レガシーロッカー」(サンフランシスコ)というサイトでは、ログイン情報を預かり、ユーザーが死去した際には、ログイン情報を指定した人にメールで伝える「if i die」(もし私が死んだら)というサービスを行っている。一方、死後、機器内に残された他人に見られたくな文章や画像ファイルを一括抹消してくれる「僕が死んだら・・・」という、遺言ソフトウエア(有限会社シーリス・大阪市)が無料公開されている。遺族が故人のパソコンを立ち上げると、デスクトップに「僕が死んだら」というアイコンが現れ、それをクリックすると本人のメッセージが流れ、その裏では残したくないファイルの消去プログラムが起動しており、遺族はその動作に気づくことなく、ファイルは完全に消去され、復元は不可能であるという。「デジタル遺産」には公的なものと私的なものが考えられるが、この場合、後者の個人的な遺産を指す。