原子力発電所(原発)などの原子力施設より、放射性物質または放射線が、異常に施設の外へ放出されるなどの緊急事態が発生した際に、内閣総理大臣によって行われる公示。東海村JCO臨界事故(1999年9月)の教訓などから、同年12月に制定された原子力災害対策特別措置法(原災法)の15条に規定されている。主務大臣 (経済産業大臣、文部科学大臣あるいは国土交通大臣)は、避難・退避が必要になると予想される異常な水準の放射線量が検出されたり、原子力緊急事態の発生を示す事象として政令で定めるものが生じた場合、ただちに内閣総理大臣に報告を行わなければならない。報告を受けた内閣総理大臣は、以下の公示を行う。(1)原子力緊急事態が発生したこと、(2)緊急事態応急対策を実施すべき区域、(3)原子力緊急事態の概要、(4)緊急事態応急対策実施区域の区域内の居住者などに対して周知させるべき事項。総理大臣は宣言とともに緊急事態の応急対策を推進するため、臨時に内閣府に自らが本部長を務める原子力災害対策本部を設置する。また総理大臣は、災害の拡大の防止を図るための応急の対策を実施する必要がなくなったと判断した場合、原子力安全委員会の意見を聴いた上で、原子力緊急事態解除宣言を行う。政府は2011年3月11日に、同日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の影響で、東京電力福島第一原子力発電所で障害が発生したとして、初の原子力緊急事態宣言を発令した。