約6550万年前の白亜紀末期に起きた、恐竜をはじめとする生物の大量絶滅のこと。絶滅の原因について、様々な研究家がその謎の解明に挑戦してきたが、日本を含む12カ国からなる研究チームは、2010年3月5日発行のアメリカ科学誌「サイエンス」に、小惑星(隕石<いんせき>)の衝突が引き起こした環境変動が原因とする論文を発表。過去数十年にわたる論争に決着が付く可能性が出てきた。隕石は直径約10~15kmとみられ、現在のメキシコ、ユカタン半島に秒速20kmで衝突し、巨大な地震や津波を引き起こしたとされる。衝撃は広島型原爆の10億倍に相当し、吹き上げられた大量のちりが大気中に放出され太陽光を遮り、気温の低下を招いた。光合成を行う植物などが死滅した結果、食物連鎖が全体的に崩壊し、恐竜を含む生物の約6割が死滅したと考えられる。一方で、大規模な火山活動が原因とする説も有力であったが、研究チームは絶滅の時期に火山活動が弱かったことなどから、影響は小さいと退けた。「隕石衝突説」は、ノーベル物理学賞受賞者のルイス・アルバレズ博士が1980年に提唱したもので、白亜紀と第三紀の境目の地層(K/T境界)から隕石がもたらしたとみられる多量のイリジウムが確認されたのが論拠になった。91年にはメキシコのユカタン半島で、隕石の落下跡とみられる直径180kmの「チチュルブ・クレーター」が発見され仮説を裏付けた。