水素ガスの瞬間的な燃焼(combustion ; burning)により生じる爆発。通常、水素(H2[“2”は下付き])はガス(気体)のかたちで存在し、もっとも軽い元素である水素原子(H)が二つ結合しただけの最小の分子量のため、漏れや上方への拡散性がもっとも高い。大気中で爆発を起こしうる濃度は4.0~75.0%と幅広く、発火点は527℃だが静電気程度のエネルギーでも着火し、火炎温度は2045℃にもなる。また、爆発という現象は2種に大別されるが、水素の場合、18.3~59.0%の濃度で爆発したときは音速(常温で秒速約340m)以上で燃焼が広がる爆轟(ばくごう detonation)となり、それ以外では音速以下で広がる爆燃(ばくねん deflagration)となる。排気成分は水蒸気と少量の窒素酸化物であり、毒性はない。2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の大津波を受けて稼働停止状態になった福島第一原子力発電所(福島第一原発)の1号機、3号機の建屋が爆発・損壊した原因が、この水素爆発によるものとされ、4号機の火災についても、水素爆発の可能性が否定できない。核燃料は連続的な核分裂反応、すなわち臨界による燃焼を続けると、たとえ臨界を停止しても、燃焼によって生じてきた生成物が発する崩壊熱を途中で止めることはできない。燃料自体はジルコニウム合金(ジルカロイ zircaloy)製の被覆管で閉じ込められ、冷却作用と同時にタービンを回す熱を伝えるための水(H2O[“2”は下付き])に浸されているが、この水を循環させなければ、炉心内の高圧下で沸点が高くなっていても沸騰による水蒸気が発生し続ける。金属が酸素(O)と結びついて「錆びる」ことはよく知られているが、このジルカロイも酸素と反応する。特に、高温下では化学反応も進みやすく、水はジルカロイに酸素を奪われ、残された水素が膨大に発生して漏出し、密閉された建屋の上方にたまったと考えられている。この経緯以外にも、水は、電気分解はもちろん、放射線や数千℃レベルの高熱によっても分解される。