RNA(リボ核酸)は、主にDNA(デオキシリボ核酸)の遺伝情報をもとに、その情報に従ったたんぱく質を作る役割を担う。通常、たんぱく質は、(1)DNAの遺伝情報を“伝令役のRNA”が転写し、(2)それがリボソームという顆粒物質に付着、(3)遺伝情報に従ってアミノ酸をつないでいくことで合成される。しかし、近年、多くの生物において、わずか21~22個の塩基でできている極小のRNA、すなわちマイクロRNAが数百種類以上見つかり、複数のたんぱく質とともにmiRNPという複合体を作っていることがわかってきた。マイクロRNAには、たんぱく質の合成を調整する働きがあるといわれてきたが、詳細は不明だった。理化学研究所のチームは、「タンパク3000プロジェクト」のもと、マイクロRNAが“伝令役のRNA”の末端を短くしてしまうことで(3)の工程を阻害し、たんぱく質の合成を調整していることをつきとめ、2007年8月1日付で発表した。がんの発生の引き金になるといわれるある種のたんぱく質の合成を食い止めたり、生物の初期発生の段階におけるたんぱく質の調整にかかわっていたりする可能性も見えてきており、生命現象のより深い解明に貢献することが期待される。