小説家、劇作家の菊池寛(1888~1948)が日本文化の各方面に遺した功績を記念して、1952年に創設された年1回の文化賞。菊池寛は、香川県高松市生まれ。代表作に戯曲「父帰る」、短編小説「恩讐の彼方に」、長編小説「真珠夫人」など多数が知られる。一方、文学者の社会的地位向上のために文芸家協会を設立したり、雑誌「文藝春秋」を創刊、これを一大出版社にするような独創性、鋭敏なジャーナリスト気質を備え、「芥川賞」「直木賞」を設け利益を文壇に還元するなど、作家活動にとどまらず、編集出版や社会的活動においても尽力し、「文壇の大御所」と呼ばれる実力を示した。菊池寛賞は、生前、特に関係の深かった文学、演劇、映画、新聞、放送、雑誌・出版および広く文化活動一般の分野において、その年度に最も清新かつ創造的な業績を挙げた個人や団体を対象に授与される。主催者は公益財団法人「日本文学振興会」。日本文学振興会は、ほかに芥川賞、直木賞、大宅壮一ノンフィクション賞、松本清張賞の選考と授与を行っている。選考は選考委員による合議によって決定。発表は10月、贈呈式は12月初旬。正賞は置時計、副賞は100万円。2010年第58回は、10月13日、東京・築地の「新喜楽」で選考顧問会が開かれ、作家生活50年の筒井康隆、90歳を超えてなお現代俳句界を牽引する俳人の金子兜太、世代を超えて広がる現代日本の病巣をえぐりだした、NHKスペシャル「無縁社会」、数々の困難を乗り越えて帰還したJAXA「はやぶさ」のプロジェクトチーム、伝統的染色の復元と技法の究明に貢献した染色家の吉岡幸雄、「万葉集」の研究・普及に努め、全国の小中学生に古代の心の豊かさを伝え続ける、中西進「万葉みらい塾」の6個人・団体に決定した。