京都市右京区の世界遺産、真言宗御室派(おむろは)総本山仁和寺(にんなじ)境内にある約200本の桜。2010年2月10日、住友林業(本社・東京都千代田区)はこの桜を独自のクローン技術で増殖させることに成功したと発表した。粘土質土壌のため人の背丈ほどにしか成長しないのが特徴。「御室有明」という品種で、遅咲きの八重桜として知られ、大正13年(1924)には国の名勝に指定されている。正保3年(1646)の伽藍再建時に植えられたものとされ、樹齢はすでに360年以上。近年は樹勢の衰えも目立ち、種の保存は急務となっていた。しかし株分けなど従来の方法では突然変異で一重になりやすい上、老化により接ぎ木に適した枝もほとんどなく、増殖は困難とされた。そこで07年4月、仁和寺は住友林業グループ、千葉大学園芸学部との共同で研究プロジェクトを発足。土壌調査やDNA鑑定などを行ってきた。今回の方法は、将来芽になる分裂組織を顕微鏡下で摘出、無菌状態で大量に発芽させ、培養土で幼苗まで育てるもので、04年、同社がすでに、豊臣秀吉の花見で知られる醍醐寺(同・伏見区)のしだれ桜で成功させている。開花は2~3年後の予定。