「源氏物語千年紀」の2008年、相次いで見つかった全54帖そろいの写本。大沢本は、鎌倉時代中期から室町時代にかけて成立したものと見られ、奈良県の旧家大沢家に伝わっていた。明治40(1907)年と昭和15(1940)年ごろに調査の記録があるが、戦後は所在不明になっていた。2005年に国文学研究資料館に持ち込まれた写本が、調査の結果それと判明し、08年7月21日、伊井春樹館長が大阪府内の講演で発表した。一方の飯島本は、書家飯島春敬が集めた古書コレクションの一部で、室町時代中期ごろのものとされる。07年4月からの中央大学池田和臣教授による調査・確認を経て、08年7月9日から東京・六本木の国立新美術館で特別展示された。紫式部作の「源氏物語」の原典は今に伝わっておらず、写本は、鎌倉時代の歌人藤原定家が校訂した「青表紙本」と、ほぼ同時代の歌人源光行・親行親子が校訂した「河内本」、どちらにも属さない「別本」の3系統があるが、大沢本で28帖、飯島本も半数弱が別本と見られ、現在流布する「青表紙本」系統以前の、原典に近い表現が見つかるのではないかと期待されている。