エスノグラフィー(ethnography)とは一般に民族誌を意味し、異なる人種・民族が持っている異文化を具体的、かつ体系的に知る研究である。災害エスノグラフィーとは、日ごろ体験することのできない災害を異文化としてとらえることで、エスノグラフィーの調査手法を防災の分野に適用しようとするものである。災害=未知の文化に遭遇したときに、現場に居合わせた人たち自身がどう判断しどう決断したか、その災害がどう映ったのかという個人体験を直接聞いて、多面的事実を残らず記録し系統的に整理した中から、ふつうは共有しがたい“暗黙知(マニュアル外知識)”を発掘、その共有化をはかり、データや報道などでは不十分な災害理解を克服して、次の災害をより良く乗り越えるための知恵と工夫を再構築する研究を指す。富士常葉大学環境防災学部や京都大学の防災専門家からなる研究グループが、1995年の阪神・淡路大震災において被災者の救援や支援に当たった神戸市職員から詳細な聞き取り調査を行い、災害エスノグラフィーを作成した。