病気や障害、高齢による機能低下などで咀嚼(そしゃく)力や嚥下(えんげ)力(飲み込む力)が衰え、一般的な食事をとるのが困難になったり、抗がん剤や放射線治療等により食欲を失ったりして、食事に苦痛を感じる人たちに、食べる楽しみを取り戻してもらおうと工夫された料理。がん治療環境の充実やがん患者のQOL(quality of life 生活の質)向上などを目指すNPO法人医療・福祉ネットワーク千葉では、2010年度よりホテルメトロポリタンエドモントのフレンチレストラン「フォーグレイン」シェフ(当時)石原雅弘の協力を得て、「ケアフード」を提唱。「ピューレ」「ジュレ」「ムース」「シャーベット」などフランス料理の伝統手法は、素材の味と香りを最大限に引き出すうえに、搾る、すり潰す、裏ごしするなどの工程を経るため、摂食困難を抱える人たちにもおいしく食べられる。また、家庭用ミキサーなどで簡単に再現でき、家族で食卓を囲む喜びを取り戻すこともできる。シェフたちの賛同者も増え、コース料理や新たなレシピの提案なども寄せられるようになった。医療・福祉ネットワーク千葉のホームページには、石原シェフや賛同者の一人山口賢シェフによるレシピ集も掲載。さらには、食後のガスやにおいに悩む人工肛門造設患者の団体への研究協力や、喉頭咽頭に手術を受けた患者グループとのリハビリに関する共同研究など、可能性はさらに広がりつつある。