仏教において観世音菩薩(観自在菩薩)を表した最も基本的な仏像。当初、観音は一つだけだったので、単に「観音菩薩」と呼ばれていたが、やがて「千手観音」や「十一面観音」などの「変化観音(へんげかんのん)」が登場するに至り、それらと区別するため、頭に「聖」(「正」とも書く)の字を付けて呼ぶようになった。奈良県奈良市の薬師寺で収蔵庫「大宝蔵殿」に保管していた高さ53センチほどの観音像が、平安時代中期(10世紀ごろ)の聖観音像であることが判明。修復が完了した2011年2月14日、同寺が発表した。頭上に幾つもの小さな面を頂く姿から十一面観音だと思われ、和紙を張り彩色を施す技法から江戸時代の作と伝わっていたが、両腕がなく、足先や鼻が欠けている状態だった。07年2月、秋の寺宝特別公開のために、同寺が民間業者に修理を依頼。表面を覆う和紙をはがしたところ、檜の一木彫で、緩やかに腰をひねった造形や彫り方の特徴から、平安時代のものと判明した。そこで薬師寺は、08年4月に奈良国立博物館文化財保存修理所に修復を依頼。同所および美術院国宝修理所の調査により、額の部分をのこぎりで切断して頭頂部をすげ替えるなど大掛かりな改修跡を発見した。また、額に宝冠の跡があることから、本来は聖観音像であったこともわかった。この像は、11年3月6日まで薬師寺東京別院(東京・五反田)で開かれている「薬師寺の文化財保護展」で公開されている。