樅(モミ)の木をはじめとする常緑樹に飾り付けを施したクリスマスのモチーフ。もともとヨーロッパではキリスト教以前の古代より、冬でも枯れない常緑樹が「永遠の生命の象徴」として重んじられていた。ツリーの起源には諸説あるが、古代ゲルマンの樹木信仰がキリスト教化したという説がよく知られる。8世紀、ドイツにキリスト教を伝えた宣教師ボニファスが当時崇拝されていた樫(カシ)の木を切り倒し、新しい信仰のシンボルとしてモミの木を与えたという。ツリーに初めてロウソクをともしたとされるのが宗教改革者のマルチン・ルター。16世紀のクリスマスイブの夜、森に降り注ぐ星々の美しさに感動し、ツリーにロウソクを飾って再現したと言い伝えられている。ツリーがドイツからヨーロッパ各地、北アメリカへと広まり、世界的に定着するのは19世紀のこと。ツリーの装飾(オーナメント)には宗教的な意味合いを持つものがある。頂上に飾る星は、キリスト生誕を知らせた「ベツレヘムの星」、つえ型のキャンディーは羊飼いのつえを意味するなど。アダムとイブが食べたとされるリンゴは、球体型のオーナメントで代用されることも多い。